遺言書について

皆さんは遺言書と聞いて、どのようなイメージを持たれるでしょうか。
「財産のたくさんある方がもめないようにするのが遺言でしょ?」と思われている
かもしれません。確かに、財産をたくさんお持ちの方は、その分割方法を考え、
遺言書を作成されているかもしれません。
どこか一般の人には縁遠いもの、と思われているのかもしれませんね。

 

ですが、私はもっと身近に感じてもいいのでは?と思います。
私自身、遺言書は作成しています。行政書士だから、というわけでは
なく、自分の死後に妻に面倒な手続きをさせたくないからです。

 

夫と妻、子ども二人のパターンで考えてみます。子供は二人とも未成年です。
さて、どんな面倒が発生するのでしょうか。

 

夫が突如として死んでしまったとします。
遺言書がなかったとしたら、まず死亡届が出されたと同時に夫の銀行口座が
凍結されます。凍結されるとどうなるかというと、毎月の引き落としが
できなくなるのと、生活のための現金をおろせなくなります。

 

次に、銀行口座の凍結を解除するために、遺産分割協議書の作成が
必要となります。遺産分割協議書というのは、すべての相続人が集まり
遺産分割協議を行った末、この財産はこの人が受け取る、この不動産は
この人が相続する、ということを文書にしたもので、相続人全員の実印と
印鑑証明が必要な書類です。この書類が整って初めて、銀行は個人の
口座から現金を引き渡してくれるようになります。

 

さて、夫が死亡した後、相続人は妻と子供二人が相続人となります。
法定での分割ですと、妻が夫の財産の1/2、子供たちはその1/2を
二人で分けますので1/4ずつ、となります。
ところが、遺産分割協議書には実印の押印とともに印鑑証明が
必要です。各地方公共団体の条例により15歳未満は印鑑登録ができません。
二人とも15歳以上でしたら、急遽印鑑を作成して登録すれば、
その場はしのげるでしょう。

 

問題は少なくとも一人が15歳未満であった場合です。この場合は家庭裁判所に
特別代理人の選任の申立てを行います。子供と利害関係のない、親族以外の
者を選任いただくよう、申立てはできますが、大体は弁護士さんが選任されます。

 

選任手続をしている間も支払い等は来ますので、引き落とし不能の
請求書が届くこととなり、妻はどこからかお金を工面する必要に迫られます。
考えただけでも大変そうです。

遺言書をつくりましょう

遺言書はお金持ちの相続のためだけでなく、実は15歳未満のお子さんをお持ちの
ご家族にこそ、必要なものと認識いただけたのではないでしょうか。
遺言書は何度でも書き直しが可能で、一番最後の日付のものが有効です。
だから、私の場合は「妻に全財産を相続させる」旨の遺言を書いています。
(今のところ家庭不和はありませんので…)
遺言執行者も妻にしておけば、あとは家庭裁判所の検認だけになります。
あとは妻を信じて、子どもたちに割り振ってもらえばいいわけです。とりあえず一家が
困り果てる状況は回避できるはずです。
また、長生きできたとして、遺言書の内容を改める必要が出てきた場合には、
実情に応じた内容に書き改めればいいわけです。

 

私はごく一般の方にこそ、遺言書を作成された方がいいと考えています。
当事務所にご相談いただければ、その時の実情に合わせた内容の遺言書の案を
作成させていただきます。
また、遺言書の形式には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言と
ありますが、どの形式で行ったらよいかのアドバイスも行います。